日印原子力協定締結に強く抗議する

11月 14th, 2016

核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)は11月12日に次の抗議文りました。


内閣総理大臣 安倍晋三殿

日印原子力協定締結に強く抗議する

 インドのモデイ首相が来日し、日印原子力協定が結ばれた。NPTに加盟していない核保有国インドとの協定であるにもかかわらず、核実験を実施した場合には協力を停止するとの文言は協定書本文にはない。日本がこれまで肯定してこなかったインドの核兵器開発・保有を承認し、国内での活路を失っている原子力産業に復興への活路を開くことをめざすものに他ならない。

今回の協定は、インドが核燃料の再処理をすることを容認しているが、インドの核兵器開発、原発推進に手を貸す危険極まりないことである。

福島原発事故により原発は危険で、高価な、時代遅れの技術である事が世界の常識となった。ベトナムは日本と結んだ新設計画を中止し、台湾は2025年までに全廃をめざしている。脱原発に舵を切ったドイツは経済発展を続けている。

被爆国であり福島原発事故を経験した日本国民の多くは、核と人類が共存できないことを痛感し核兵器の廃絶とともに、脱原発、再生可能エネルギーの普及を希求している。

しかるに安倍政権は先の国連での核兵器禁止条約の決議に反対したのにつづいて、日印原子力協定締結によって核兵器の拡散容認と原発推進を実行した。

昨年11月にわたしたちは広島で世界核被害者フォーラムを開催した。ここにはインドのジャドゥゴダにあるウラン鉱山での放射線障害による住民の健康障害が報告された。今回の協定締結によりウラン鉱山周辺住民の被害を助長することがあってはならない。

私たち核兵器と核発電の廃絶をめざす広島市民は、今回の日印原子力協定の締結に強く抗議し、その破棄を求める。

                          2016年11月12日

      核兵器廃絶をめざすヒロシマの会

Hiroshima Alliance for Nuclear Weapons Abolition (HANWA)

共同代表  青木克明  足立修一  森瀧春子

事務局:〒730-0013広島市中区八丁堀5-22

メゾン京口門404号室 足立・西法律事務所

(TEL)082-211-3342

(Eメール) hanwa(@)e-hanwa.org

 

日本政府が核兵器禁止条約に関する国連決議案に反対したことに強く抗議する

10月 29th, 2016

内閣総理大臣 安倍晋三殿

外務大臣   岸田文雄殿

 

日本政府が核兵器禁止条約に関する国連決議案に反対したことに強く抗議する

 

オーストリアなど50カ国以上が国連に提出した2017年3月から核兵器禁止条約制定交渉を開始する決議案は賛成123カ国、反対38カ国、棄権16カ国の70%の賛成で採択された。

世界の市民は核兵器による威嚇ではなく、人権を尊重した話し合いによって国際社会の平和を実現することを望んでいる。核兵器廃絶は人類の悲願であり、その道程として、多数の核兵器非保有国が結集して保有国を包囲していく行動が着実に前進している。

しかし米国は同盟国に決議案への反対を迫り、米国の核の傘の下で、米国と共に戦争をする国を目指している日本政府・安倍政権はこれに従って国連での核兵器禁止条約の交渉入り決議に反対の票を投じた。

米国の原爆投下によって甚大な被害を受け、今なお原爆症に苦しむ被爆者が多数存在する日本は本来ならば共同提案国の要となるべき国である。今回、日本政府が反対票を投じたことはわれわれ日本国民のみならず平和を願う世界の市民にはとうてい理解できず許せないことである。

5月27日のオバマ大統領ヒロシマ訪問は、多くの広島市民が核兵器禁止への道のりが進むことを願って歓迎した。オバマ大統領と安倍首相は慰霊碑の前で核の被害者に何を誓ったのであろうか。

私たち核兵器廃絶をめざすヒロシマの会は、今回の決議案に反対した日本政府・安倍政権に強く抗議し、核なき世界の一刻も早い実現のため核兵器禁止条約の制定に向けて、世界の市民と共に活動を継続していくことを表明する。

2016年10月28日

核兵器廃絶を求めるヒロシマの会

Hiroshima Alliance for Nuclear Weapons Abolition (HANWA)

共同代表  青木克明  足立修一  森瀧春子

事務局:〒730-0013 広島市中区八丁堀5-22

メゾン京口門404号室 足立・西法律事務所

(TEL)082-211-3342

(Eメール) hanwa(@)e-hanwa.org

 

奪われた村  避難5年目の飯舘村民

10月 4th, 2016

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上映&監督トーク

奪われた村避難5年目の飯舘村民

 

被爆地広島だからこそ、知っておかなくてはいけない真実がある

フォトジャーナリスト 豊田直巳が撮ったドキュメンタリー

 広島初上映と豊田監督が見た「福島の今」を語る

 

福島第一原発事故から 5年!

避難を余儀なくされた飯舘村の人々を追ったドキュメンタリー作品「奪われた村 避難 5年目の飯舘村民」の上映会とフォトジャーナリスト豊田直巳監督を迎えてのトークショーを開催。福島の美しい村々から一体何が「奪われた」のかを皆さんにお伝えします。そして、広島にいる私達にはいったい何ができるのか?共に考えてみませんか?

 


2016年11月3日(祝日)

先着 100名 要申し込み 一般 700円 /学生 300円

場  所 合人社ウェンディひと・まちプラザ 北棟 6階 マルチメディアスタジオ

広島市中区袋町 6番 36号 TEL 082-545-3911

時  間 16:30~ 18:45     開場 16:15~

上  映 16:30~ 17:40

トーク会 17:50~ 18:20

質疑応答 18:20~18:45

 


ご希望の方は 10月 29日(土)までメールにてお申し込みください。但し、定員になり次第締め切ります。

お申し込みの際、メールにお名前・連絡先(電話番号)をお知らせください。(複数申し込み可)

お申し込みメールアドレス gcc@hiroshimaymca.org

お問い合わせ  公益財団法人広島YMCA 国際コミュニティーセンター

〒730-8523 広島市中区八丁堀7-11 Tel 082-228-1151(中奥)

共催:NO DU(劣化ウラン禁止)ヒロシマ・プロジェクト

協賛:核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)


監督 豊田 直巳  フォトジャーナリスト

映画「遺言 原発さえなければ」共同監督

 

3・11以降の主な著作

『フクシマ元年 原発震災全記録』(毎日新聞社)

『福島を生きる人びと』 (岩波書店 )

『福島 原発震災のまち』(岩波書店)共著

『TSUNAMI 3・11―東日本大震災記録写真集 豊田直巳編』(第三書館)

『JVJA写真集3・11メルトダウン』(凱風社 )

 


奪われた村~避難5年目の飯舘村民

 監督 /撮影 豊田直巳 2016年 / 64分 / 日本語 / ドキュメンタリー

 

5年を経て明らかになる放射能汚染地帯の現実

福島第一原発の爆発直後のまだ村にヨウ素131が漂い、セシウムが強烈な放射線を放っている時期には「安全だ」と言われて村に留め置かれ、半減期8日の放射性ヨウ素が放射線を放って消滅した頃になって村民全員がふる里を追われた飯舘村。

以来、村人は放射線被ばくによる健康不安、慣れない仮設住宅に暮らすストレス、共同体の崩壊による孤独感を味わってきました。

そして時を経るごとに実感するようになるのは、原発事故によって奪われたものの大きさでした。

しかし、村を追われ、理不尽さを耐え忍んできた人々が、いま、声を上げたのです。原子力ムラに叛旗を翻すべく、ADRに申し立てたのです。

「謝れ!償え!かえせふるさと飯舘村」と。

このドキュメンタリー作品は人口の過半数を超える3000余名の村民が立ち上がった「謝れ!償え!かえせふるさと飯舘村」原発被害糾弾飯舘村民申立団の協力を得て取材撮影されました。

また製作に当っては同申立団を法的に支える弁護団の協力の下、ドキュメンタリー映画『遺言~原発さ得なければ』の共同監督でフォトジャーナリストの豊田直巳が、自らカメラを回し、また構成・監督を務めました。

撮影は昨年(2015年)3月から今年、4月まで1年に及びました。それは、村民が「奪われたもの」が何なのかを、製作する側が実感するためにも必要な時間でした。しかし、村人自身が「奪われたもの」が何なのかを自覚するまでには5年という、あまりに長い苦渋の歳月があったのです。

この作品に登場する村人の眼前に、そして心の中にあった「美しい村」から何が「奪われた」のか、是非、ドキュメンタリーをご覧いただき、こころに留め置かれること願いつつ・・・。

 


豊田監督から

「シリアには行かないんですか?」「今度はいつイラクに?」と聞かれます。でも、私には5年前から日本も戦場になってしまっていたのです。福島第一原発が爆発したとき、福島に向かっていた私はカメラバックにガイガーカウンターを入れていました。それは、イラクの戦場取材で使っていたものです。米英軍が攻撃機や戦車で撃ち込む劣化ウラン弾も目には見えない放射線を調べるためでした。

そして 、福島ではそのガイガーカウンター役に立ったのです。とても残念で悔しいことでしたが・・・・。 それにしても、その放射線測定器を「まさか日本で使うようになるとは」と 思いながら。

2年前に公開した映画『遺言~原発さえなければ』(野田雅也氏と共同監督)でも放射能から逃げ後れた住民の方は、高濃度汚染地帯に取り残されたままこう言ったのです。「目に見えない戦場で戦っているみたい」と。この『奪われた村』は、「見えない戦場」で続く「戦争」の下に生きる人びとのドキュメントです。

2016年6月 豊田直巳

事務所移転のお知らせ

9月 22nd, 2016

核兵器廃絶をめざすヒロシマの会会員の皆様、その他の皆様

 

このたび、事務所を次の場所に移転しましたのでお知らせ致します。

引き続き、ご支援の程、よろしくお願い致します。

 

新事務局:

〒730-0013 広島市中区八丁堀5-22 メゾン京口門404号室

足立・西法律事務所内

(TEL)082-211-3342

(Eメール) hanwa(@)e-hanwa.org @の()をとります。

Request regarding Nuclear Policies of the Japanese Government

9月 10th, 2016

The Honorable Shinzo Abe

Prime Minister of Japan

 

Request regarding Nuclear Policies of the Japanese Government

Urging actualization of a U.S. no-first-use policy and nuclear weapons convention

 

As a citizens group working in Hiroshima for the abolition of nuclear weapons, we hereby present this request to the Japanese government.

According to a report in the Washington Post, U.S. President Barack Obama is considering revising U.S. nuclear policy to include a no-first-use declaration. In response, according to the report, Prime Minister Abe has opposed this declaration, which is an utterly inappropriate stance for our A-bombed nation. This stance is embarrassing and invites suspicion and mistrust not only in Hiroshima but around the world.

Hiroshima and Nagasaki, which have experienced the unprecedented, inhumane devastation of nuclear weapons, cannot accept the existence of nuclear weapons. We certainly could never countenance their use under any circumstances whatsoever.

In news reports on the topic, the reasons given for Prime Minister Abe’s stance included, “Weakening our deterrence against North Korea.” This excuse demonstrates the Japanese government’s dependence on nuclear deterrence for security, which flatly contradicts the statements the Prime Minister read in front of the A-bomb Cenotaph when he visited Hiroshima with President Obama and again during the ceremony on August 6. To resist even a no-first-use policy exposes a profound contradiction in the Japanese government’s own assertions that it is pursuing gradual, step-by-step nuclear disarmament.

 

Recently a UN Open-ended Working Group (OEWG) has been working to abolish nuclear weapons by instituting a ban treaty. The vast majority of countries support such a treaty, but the Japanese government has repeatedly obstructed this effort with statements like, “The time is not ripe,” or “fill the gap between the nuclear and non-nuclear nations.” Again, such statements and attitude such as abstention from voting invite distrust and disappointment in Hiroshima and throughout the world.

As the only country to experience the combat use of nuclear weapons, Japan must immediately support the OEWG recommendations when they come up in the UN General Assembly this fall, and take the lead in promoting the negotiations for a ban on nuclear weapons, proposed to start in 2016. Support for the OEWG is the only way to recover the lost trust of those around the world seeking the abolition of nuclear weapons.

 

The A-bombed nation has shocked the world by opposing no-first use. Because we have 48 tons of plutonium and suspicious nuclear fuel cycle policies, the government’s opposition to no-first-use raises the specter of Japan as a latent nuclear-armed nation.

 

We demand the following of the Japanese government:

Stop opposing the U.S. no-first-use declaration.

At the UN General Assembly this fall, do not obstruct the start of negotiations in 2016 for a nuclear weapons convention as proposed by the OEWG; instead, take the lead, as is appropriate for the A-bombed nation.

Eliminate your accumulated plutonium and halt all plans to use the nuclear fuel cycle to produce more plutonium.

 

This is an appeal from Hiroshima, which has known the unparalleled inhumanity of nuclear weapons.

 

August 26, 2016

 

Co-Representative of Hiroshima Alliance for Nuclear Weapons Abolition (HANWA)

Katsuaki Aoki

Shuichi Adachi

Haruko Moritaki

 

Office:

Adachi–Nishi Law Office

Room 404 Maison Kyoguchimon

5-22 Hacchobori, Naka-ku, Hiroshima 730-0013

(TEL) 082-211-3342

(Email) hanwa (@) e-hanwa.org

 

 

 

日本政府の核政策に関する要請書

8月 26th, 2016

内閣総理大臣 安倍晋三殿

 

   日本政府の核政策に関する要請書

   米の核兵器先制不使用を実現させ核兵器禁止条約制定への貢献を求める

 

広島で核兵器廃絶のために取り組む市民組織として、日本の核政策に関し次のように要望します。

米紙ワシントン・ポストなどの報道によると、米オバマ大統領が核政策の見直しとして核兵器の先制不使用宣言を意図していることに対し、安倍首相が反対を表明しているということですが、これは被爆国としてあるまじきことです。

ヒロシマのみならず、世界中に疑惑と不信感をもたらす恥ずべきことと考えます。

核兵器の使用によってもたらされた未曾有の非人道的破壊を体験したヒロシマ・ナガサキはいかなる理由があろうとも核兵器の存在・使用を許すことはできません。

報道では「北朝鮮への核抑止力が弱まる」などを理由としていますが、これは日本政府の安全保障政策が核抑止力に依存したものであることを表しています。

オバマ米大統領の広島訪問に同行して慰霊碑前で読み上げた「核兵器のない世界を必ず実現する」というメッセージや8・6式典での自らの発言と、現実にとっている核政策との矛盾を露呈するものです。

せめてもの核先制不使用をという動きに抵抗することは、漸進的、段階的な核軍縮をと主張してきている日本政府自身の主張にも矛盾することです。

 

先の国連公開作業部会でも核兵器禁止条約の制定による核兵器廃絶の実現をという圧倒的な多数の国々による国際的な潮流に対し、日本政府が「時期尚早」「保有国と非保有国の溝を深める」云々と主張したあげく棄権するという態度もまた広島のみならず世界の不信、失望を招いています。

唯一の戦争被爆国として、秋の国連総会において提起される公開作業部会の報告に賛同し、2016年から核兵器禁止条約の制定に向けた議論を開始しようとする動きを先導することこそが核兵器廃絶を願う世界の人々の信頼を回復する道です。

 

世界に衝撃を与えている被爆国日本の「核先制不使用」反対の姿勢は、現に48トンに上るプルトニゥ-ムを保有し更に核燃料サイクル政策の維持により、日本の核兵器保有への疑念を国際社会により一層もたらしています。

 

日本政府安倍政権に求めます。

米の核兵器先制不使用宣言に反対しないこと。

秋の国連総会において、国連公開作業部会から提案される核兵器禁止条約制定のための

2016年議論開始を妨害することなく被爆国として先導すること。

備蓄プルトニュームを廃棄し、核燃料サイクル政策の維持によるプルトニュームの増産計画をやめること。

 

以上、核兵器の比類なき非人道性を体験したヒロシマから訴えます。

 

2016年8月26日

 

核兵器廃絶を求めるヒロシマの会

Hiroshima Alliance for Nuclear Weapons Abolition (HANWA)

共同代表  青木克明  足立修一  森瀧春子

 

事務局:〒730-0013広島市中区八丁堀5-22

メゾン京口門404号室 足立・西法律事務所

(TEL)082-211-3342

(Eメール)  hanwa(@)e-hanwa.org

8・6ヒロシマ国際対話集会ー反核平和の夕べ2016

7月 31st, 2016

HANWA86

 

8・6ヒロシマ国際対話集会―反核の夕べ 2016

シンポジウム: 日米の核をめぐる現状と進むべき道

―核兵器禁止条約(国連作業部会)・原発再稼働・憲法改悪-

 


日時:2016 年日(土)15:00~18:30

場所:合人社ウェンディひと・まちプラザ(広島市まちづくり市民交流プラザ)

6Fマルチメディア・スタジオ

(広島市中区袋町6番36号 電話:082‐545-3911)

資料代 700円(学生無料)

 


<パネリスト>

 太田昌克さん(ジャーナリスト、共同通信編集委員兼論説委員)

核をめぐる世界の状況と参院選後の日米核同盟

 小寺隆幸さん(原爆の図丸木美術館理事長、京都橘大学教授)

アメリカでの「原爆の図」巡回展と米国内の核をめぐる世論の動向

ピーター・カズニックさん(アメリカン大学教授)

米の核政策と日米関係の現段階

森瀧春子さん(核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)共同代表)

核兵器廃絶、原発廃絶、憲法改悪阻止のための課題

<コーディネーター>

嘉指信雄(ICBUW-Hiroshima代表、HANWA運営委員、神戸大学教授)

 


共催:核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)

NO DU(劣化ウラン兵器禁止)ヒロシマ・プロジェクト

オバマ大統領 来広の意味を問う市民シンポジウム 声明

6月 19th, 2016

オバマ大統領 来広の意味を問う市民シンポジウム 声明

                          2016年5月27日

 米国による広島及び長崎へのウラニューム及びプルトニウム原爆の投下は、その年の末までに20数万人の命を奪い、さらに毎年数千人の‘遅れた原爆死’を今に至るまでもたらしてきた。生き残った被爆者も家族を奪われ健康と生活を破壊され、次世代の遺伝子損傷への不安など心身の重荷を背負わされてきた。

被爆者はその未曾有の非人間的悲惨の極地の体験から、核兵器が類を見ない非人道的兵器であることを実感し『核と人類は共存できない』という認識を持つに至った。その体験から71年間にわたって困難を極める中で被爆者援護、核兵器廃絶の闘いを担ってきた。すでに多くの被爆者は亡くなっており、生き残った被爆者に残された時間は多くない。

しかし、米ロをはじめとする9カ国が核兵器を保持し、いまだに核抑止力を国是としている。核軍縮は進展するどころか、保有国は臨界前核実験など核兵器の性能の高度化を進めている。そんな中で被爆国である日本政府は、「憲法9条は一切の核兵器の保有および使用を禁止しているわけではない」という閣議決定をしたが、実際にプルトニウムを47トン保有し、さらに核燃料サイクルを維持しており、潜在的核保有国と国際的にみなされている。

オバマ大統領は、2009年のプラハ演説で「核なき世界を」とアピールしたが、その中で「核兵器を唯一使用した核保有国として行動する道義的責任がある」と述べる一方で「核兵器が世界に存在する限り自国が核兵器を手放すことはない」とも述べた。その矛盾はその後7年間の行動に現れ、ヨーロッパへのミサイル防衛システムの導入などロシアへの挑発となり核軍縮交渉は停滞し、30年間に1兆ドルをかける計画で、今後も核兵器の性能の高度化、使用しやすい小型核の開発などを進めている状態であり、かかげる「核なき世界」とは程遠い状態に自らを置いている。

オバマ大統領は自身が抱える矛盾、‘核なき世界を’と‘核抑止力依存’を、広島訪問によって克服することが期待された。被爆の実態に広島現地で触れることによって、原子爆弾投下がもたらした無辜の市民への無差別大量虐殺の実態を直視し、核兵器がいかなる理由によっても肯定されるものでなく、人類の存続のためには直ちに廃絶されるべき非人道的なものであることと認識し、核なき世界の実現のため世界に核の非人道性を高らかに宣言することが期待された。

核兵器を使用し、比類なき大量虐殺とそれに続く放射能被害による苦痛を強制した当事国の大統領として、原爆投下が絶対的な過ちであったことを認め、まず原爆死没者と苦難を生き抜いてきた被爆者に謝罪することが求められた。罪のない一般市民を比類ない殺傷力を持つ原爆投下を国家として行い無差別大量虐殺をもたらした国際人道法に違反する戦争犯罪だと認めることは、核なき世界を求める道を真実のものにするためには欠かせない道程だと私たちは確信している。核兵器を根底から否定することなしに‘核なき世界’の実現はありえないからだ。日本政府が「謝罪は求めない」とし、過去を水に流すというような‘美しい‘環境が作られてきたが、それは同時に侵略戦争や植民地支配において日本がアジア諸国などに対して犯した過ちへの謝罪と加害責任をあいまいにし蓋をする環境づくりになるものである。憎しみを乗り越えることと、過ちを問い、謝罪を求めることは相反することではない。「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」とナチズムによる虐殺の歴史を直視し過去と決別したドイツの姿に学ぶべきである。原爆による被害とアジア諸国への加害についての歴史的認識は切り離せない。

被爆国でありながら、米国の核の傘に依存した核抑止力を国の安全保障の基本としている日本政府は、オバマ大統領の広島来訪が日米同盟強化の新たなスタートを切るものだとあからさまに広島の地を利用している。歴史を振り返り歴史的事実と向き合うことをせず、あたかも広島の地で71年前に引き起こされた国家による犯罪を和解の名のもとに無かったかの如くにふるまうことを私たちは認めることはできない。

国連における核軍縮作業部会で核兵器の法的禁止への論議が進んでいるが、米国などの核保有国はボイコットし、代わって米国の核の傘に頼る日本政府が核保有国を代弁して、核兵器の法的禁止に反対し、核兵器禁止への大きな国際的動きを必死で妨害しているのが現実である。日米両国が「閉塞している核軍縮」を切り開く画期的な機会だと宣伝しているオバマ大統領の広島訪問は、両国が核兵器禁止への世界の流れを妨害している現実を覆い隠す欺瞞でしかない。米国が国連核軍縮作業部会に参加し、最大の核保有国の大統領として、人類の生存に責任を持ち、核兵器禁止の先頭に立たない限り「核なき世界」を掲げても空しい。

世界の多数の国々から、また世界の民衆から沸き起こっている核廃絶への強い意志のうねり、すなわち核兵器を非人道的なものとして法的に禁止する核兵器禁止条約制定への世界的潮流こそが現実的な‘核なき世界’に導く道であると確信を持って広島の地から発信すべきであった。

戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認を定めた日本国憲法第9条は核兵器廃絶と戦争の根絶を求める広島市民の心のよりどころである。日本政府は、自衛隊が世界中で米軍と一体となって武力行使ができる安全保障法制を施行し、憲法9条を否定する暴挙に出た。そしていま、日米同盟下の米軍基地の重圧に苦しむ沖縄では、元海兵隊員の米軍属による女性遺棄事件が起き、オール沖縄が「基地のない沖縄」を求めている。オバマ大統領の広島訪問を、安保法制による日米同盟強化発信の舞台に利用することを私たちは絶対に認めることはできない。

オバマ、安倍両政権が世界各国への原子力協定による原発などの輸出、原発再稼働や新設など原子力推進政策をとる限り、核拡散と核軍事力の維持強化が進み、核兵器廃絶を求める世界的潮流に真っ向から逆らうものである。私たち市民は核問題を軍事利用と商業利用を核利用サイクルとして一体のものとして捉え、すべての核の廃絶に取り組んでいくものである。

核兵器廃絶をめざすヒロシマの会

 (2015,6,20更新)

Statement from the Public Symposium Upon President Obama’s Visit to Hiroshima

6月 19th, 2016

Statement from the Public Symposium
Upon President Obama’s Visit to Hiroshima

Hiroshima Alliance for Nuclear Weapons Abolition (HANWA)

The United States dropped uranium and plutonium bombs on Hiroshima and Nagasaki in 1945. By the end
of that year, the bombs had taken more than 200,000 lives. To this day, thousands of people are lost every
year to a phenomenon we call “delayed A-bomb death.” Most of those who survived lost family members,
their health, their means of making a living, and have carried a heavy burden of fear related to genetic
effects in succeeding generations.

The Hibakusha (atomic bomb survivors) experienced an unprecedented, extreme example of inhumanity.
They know in their bones that nuclear weapons are uniquely inhumane weapons, with which humanity
cannot coexist. From their experience, they have for 71 years worked within extremely difficult
circumstances for relief for Hibakusha, and for the abolition of nuclear weapons. Many Hibakusha have
passed away already, and those remaining do not have abundant time left.

Despite their efforts, the nine nuclear-armed states, including the US and Russia, continue to possess
nuclear weapons, and maintain nuclear deterrence as national policy. Far from pursuing disarmament, the
nuclear-armed states conduct subcritical nuclear tests and otherwise seek to improve the function of their
nuclear weapons. Meanwhile, the government of A-bombed Japan has recently adopted a cabinet
resolution declaring that Article 9 of the country’s Peace Constitution does not prohibit the possession and
use of nuclear weapons. In fact, with its 48 tons of plutonium and maintenance of the nuclear fuel cycle,
Japan is already seen internationally as a latent nuclear-armed nation.

President Obama, in 2009 in Prague called for a “world without nuclear weapons.” He went so far as to say
that “as a nuclear power, as the only nuclear power to have used a nuclear weapon, the United States has a
moral responsibility to act.” But at the same time, he stated that “as long as these weapons exist, the
United States will maintain a safe, secure and effective arsenal to deter any adversary, and guarantee that
defense to our allies.” This contradiction has manifested consistently in the actions of the Obama
government throughout these seven years. Introducing a missile defense system in Europe, for example,
provoked Russia and brought disarmament negotiations to a halt. And the United States continues to
modernize its nuclear weapons by spending one trillion dollars on its military budget, developing easier to
use smaller nuclear weapons. The real positioning is far from the “world without nuclear weapons” for
which President Obama appealed.

We hoped that President Obama’s visit to Hiroshima could serve to resolve the contradiction of pursuing a
world without nuclear weapons whilst relying on nuclear deterrence. We wanted him to personally face the
reality of the indiscriminate slaughter of innocent human beings through the dropping of the atomic
bombs. President Obama has now seen with his own eyes that no use of nuclear weapons should ever be
allowed, and that these weapons threaten the continued survival of our species. We had hope that he
would save us from this threat by declaring, from Hiroshima to the world, that nuclear weapons are
inhumane, unusable, and must immediately be abolished.

As the President of the country in question, we wanted President Obama to acknowledge that the US used
nuclear weapons which resulted in inconceivable pain, suffering and indiscriminate slaughter, including the
endless horror of radiation exposure, and recognize that this was an absolute mistake. We hoped for a
sincere apology to be given to the departed victims, and to those who managed to survive. We believe the
US should recognize that murdering innocent civilians with an incomparably destructive weapon is a war
crime that violates international humanitarian law, and apologize for this. Such an apology is an
indispensable step in the journey for a world without nuclear weapons. Such a world cannot be achieved
without recognizing that nuclear weapons are fundamentally wrong. The Japanese government announced
it will not ask for an apology from the United States. Such a “beautifully set” environment may lead Japan
to stay ambiguous about its wartime invasions and to avoid apologizing for its own actions. Overcoming
revenge caused by hatred and asking for an apology are two separate things. We should learn from
Germany, which directly faced the history of the Nazi massacres, and walked from the past into the future.
As the Germans said, those who shut their eyes to avoid the past cannot see the present. We cannot
separate the history of the damage caused by nuclear weapons and the attacks perpetrated upon Asian
nations.

Japan is the only country to experience the bombing of nuclear weapons during war. However, its current
national security is dependent on nuclear deterrence under the US nuclear umbrella. The Japanese
Government is presenting President Obama’s visit as increasing momentum for nuclear disarmament,
however it is using Hiroshima as a tool to strengthen and reinforce the US-Japan alliance. It seems almost as
if the Governments of Japan and the US intended the Hiroshima visit to allow them to not reflect upon the
historical facts of the past, and to act as if crimes perpetrated by the states 71 years ago did not happen,
under the name of reconciliation.

The discussion to legally ban nuclear weapons is ongoing at the United Nations Open Ended Working Group
on Taking Forward Multilateral Nuclear Disarmament Negotiations (OEWG). However, this is being
boycotted by the nuclear-armed states, including the US. The Japanese Government, protected by the US
nuclear umbrella, spoke at this meeting on behalf of the boycotting countries. Japan is against a legal ban of
the use of nuclear weapons, and is working to obstruct the significant international movement towards
such a ban – this is the reality. The Japanese and US Governments present President Obama’s visit to
Hiroshima as an opportunity to break through the slow progress towards nuclear disarmament. However,
the reality is that this visit is just an opportunity for the US and Japan to hide the role both nations are really
playing. Even if President Obama calls for “a world without nuclear weapons,” his words will be powerless
unless the US participates in the OEWG. As the leader of the state possessing the largest nuclear force,
President Obama must take responsibility for the existence of humanity, and take the lead towards the
banning of nuclear weapons – otherwise his words are empty.

The strong international movement for nuclear abolition coming from many many states and also citizens
around the world, particularly efforts to establish a treaty to legally ban nuclear weapons on the grounds of
their inhumanity, is the way to make a “world without nuclear weapons” the reality. This is the message
that should have been sent from Hiroshima.

“Renunciation of war”, “renunciation of military forces”, and “denying the right of belligerency of the state”
are stated in Article 9 of the Japanese Constitution. The people of Hiroshima, who call for nuclear abolition
and an end to war, believe strongly in this. The Japanese Government enforced a set of security laws which
allow the Japanese Self-Defense Force to use military force with the US military. This goes against Article 9,
and President Obama’s visit to Hiroshima should not be allowed to be used as a performance to show a
stronger alliance between Japan and the United States.

As long as the Obama and Abe administrations continue nuclear cooperation policies to export nuclear
energy to the world and policies to promote nuclear energy such as the restart of nuclear power plants,
nuclear proliferation and the possession and strengthening of nuclear military capacity will continue. This
goes in the opposite direction to movements towards the abolition of nuclear weapons. We citizens
consider both the military and commercial use of nuclear technology are linked within the nuclear use
cycle, and pledge to work on these issues in connection.

May 27, 2016

核兵器廃絶への一歩となるか否か―オバマ大統領の来広の意味を問う市民シンポジウム

5月 25th, 2016

160527


核兵器廃絶への一歩となるか否か

オバマ大統領の来広の意味を問う

   市民シンポジウム


5月27日(金)18:00~20:00

広島県立体育館中会議室   広島市中区基町4−1 Tel 082-228-1111

資料代:500円(学生無料)


<パネリスト>

佐々木猛也 反核法律家協会会長

朝長万左男 核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委委員長/長崎原爆病院名誉院長

藤森俊希  日本原水爆被害者団体協議会事務局次長

川崎 哲  ピースボート共同代表/ICAN国際運営委員

村上正晃   平和公園ボランティアガイド

森瀧 春子  核兵器廃絶をめざすヒロシマの会共同代表/世界核被害者フォーラム事務局長

 <コーディネーター>

沢田 正  核兵器廃絶をめざすヒロシマの会運営委員/世界核被害者フォーラム事務局次長

 

オバマ大統領が主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)後に広島を訪問することが決定しました。71年前の米国による広島・長崎への原爆投下は20数万人の命を奪いさらに現在に至るまで毎年数千人の遅れた原爆死をもたらしてきました。生き残った被爆者も家族を奪われ健康と生活を破壊され、次世代の遺伝子損傷への不安など心身の重荷を背負わされてきました。被爆者はその未曾有の非人間的悲惨の極地の体験から、核兵器が類をみない非人道的兵器であることを実感し『核と人類は共存できない』という認識に至り、71年間その体験を語り続け、世界に核兵器廃絶を訴えてきました。

 

しかし、米ロをはじめとする核保有国9か国は被爆者の声を無視し、核抑止力を国是とし核兵器をいまだに保持し続け、国連総会決議に基づいて今年2月から始まった「核兵器のない世界の達成のために必要な具体的で効果的な法的措置について実質的に議論する」公開作業部会にも欠席を続けています。

 

オバマ大統領は2009年プラハ演説で「核なき世界」をアピールしました。一方、核抑止力依存政策を維持し、「自分の生きている内に核兵器はなくならない」という矛盾した発言をしています。私たちが求めるものは、この矛盾を広島の地で克服し、世界の民衆から沸き起こっている核廃絶への強い意志のうねり-核兵器を非人道的なものとして法的に禁止する核兵器禁止条約発効-こそが「核なき世界」への道であると確信を持って発信することです。市民の立場からオバマ大統領来広の意味について考え、核兵器廃絶への道筋を明らかにしていきましょう。


共催:核兵器廃絶日本NGO連絡会

       : 核兵器廃絶をめざすヒロシマの会

連絡先:090-8310-5370(川崎)

:090-9064-4705(森瀧)