しかしながら、ロシア自身がウクライナで用いている砲弾のなかに劣化ウラン弾(3BM32 “Vant”)が含まれることが、GICHD(Geneva International Center for Humanitarian= ジュネーブ人道的地雷除去国際センター)による2022年の報告で明らかにされている[1]。こうした事実を考えるならば、ロシアの反応は、自己撞着のきわみであり、その確信的な非人道性を証明するものだと言わざるをえない。
なお、イラク戦争が開始される直前の2003年3月、広島では、”NO WAR NO DU!(戦争反対 劣化ウラン弾反対!)”の人文字メッセージが、中央公園に集まった約6000人の人々によって作られた。湾岸戦争に続き、再び劣化ウラン弾を用いて戦争が行われることへの強い抗議の表れであり、3月24日、その空撮写真を用いた意見広告がニューヨーク・タイムズに掲載された(添付資料を参照)。また、イラク戦争の前後から、広島や日本からの市民グループは、現地で劣化ウラン弾被害に関する調査を試み、イラクの医師や子どもたちへの支援に取り組んできている[12]。
[3]アメリカでは、増え続ける膨大な劣化ウランの処理・利用法の研究が50年代から始められ、考案された一つが軍事利用である。劣化ウラン化合物は、鉄よりも硬く、鉛よりも重いため、砲弾の貫通体部分や戦車の装甲などに使われてきているが、衝突の衝撃によって発火し、微粒子となって環境中に拡散する。「劣化ウラン(DU=depleted uranium」という呼称は、その危険性を覆い隠し、誤った印象を与えてしまうが、通称として本声明においても用いることとする。詳細は、「[劣化]ウラン兵器とは何か?」(『ウラン兵器なき世界をめざして―ICBUWの挑戦』NO DU ヒロシマ・プロジェクト/ICBUW編、合同出版、2008年、6-13頁)を参照されたい。
[7] “Ukraine war: UK defends sending depleted uranium shells after Putin warning,” BBC, March 22, 2023 (https://www.bbc.com/news/world-europe-65032671).
典拠は、The Environmental Impact of the Conflict in Ukraine: A Preliminary Review, UNEP, October 14, 2022 (https://www.unep.org/resources/report/environmental-impact-conflict-ukraine-preliminary-review).
典拠は、ワシントンの「核政策研究所」が2003年7月に発表した報告書「劣化ウラン――危険性評価の科学的根拠」(“Depleted Uranium: Scientific Basis for Assessing Risk,”Nuclear Policy Research Institute, July, 2003 (https://www.helencaldicott.com/depleted.pdf).