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原爆投下責任の議論「棚上げ」答弁への公開質問状

木曜日, 9月 28th, 2023

原爆投下責任の議論「棚上げ」答弁への公開質問状

広島市は9月21日と22日の市議会本会議で、平和公園と米国のパールハーバー国立記念公園の姉妹公園協定に関して、原爆投下責任の議論を「棚上げ」して「和解の精神」で「未来志向の取り組み」をすると、村上慎一郎市民局長が答弁しました。私たちは、この答弁に不安と疑念を感じます。世界で核戦争の危機が迫っている今こそ、原爆投下の非人道性と投下責任を、声を大にして問わなければならないと考えるからです。広島市の姿勢が、プーチン・ロシアによる核兵器使用を容認することにもなりかねないと危惧します。このような重大答弁が松井一実市長ではなく、市民局長からされたことにも驚きと失望を感じます。

ただ、この答弁は私たちには理解しにくいところが多くあります。まずは、広島市側の考えを確認したいと思いますので、以下の質問にお答えください。

1.姉妹公園の交渉のなかで、広島市側は原爆投下責任の議論を「棚上げ」することを米国側と確認したのですか。逆に、米国側は真珠湾攻撃の責任議論を「棚上げ」することを明言したのですか。交渉において「棚上げ」とは、問題を保留することを双方が合意することですが、そういう合意はされたのですか。真珠湾攻撃と原爆投下という20世紀の重大事件について、そのような合意がされたのなら、人類史のエポックとして記録されることと思いますが、私たちは現段階で知り得ていません。また、このような重大な決断をするにあたり、松井市長は被爆者や市民の声をいつ、どのように聞かれましたか。

2.原爆投下責任の議論は広島市の言うところの「和解」の妨げになりますか。双方が真剣に話し合ってこそ、「和解」ができるのではないですか。当然、日本の真珠湾攻撃やアジア諸国への加害責任についても同じことだと私たちは考えますが、松井市長の見解をお聞きします。

3.「現時点では棚上げする」としていますが、いつになったら原爆投下の責任を問うのですか、あるいは原爆投下の責任に関する議論をするのですか。

4.ウクライナの戦争が長びく中、世界は核戦争の危機にさらされています。原爆投下責任の議論を棚上げするという広島市の姿勢は、プーチン・ロシアによる核兵器使用を容認することにはなりませんか。「現在の世界情勢を考慮するならば、今こそ和解の精神を重視した対応を逃してはならないと判断し、姉妹公園協定を締結した」と答弁していますが、広島市は世界情勢をどう分析していますか。

5.答弁では「広島ビジョンの中で安全保障政策に言及し、核の抑止力を肯定する記述はありますが、それは核抑止論が既に破綻していることを明示するものであり和解の精神に何ら関係するものではないと考えております」としていますが、なぜ広島ビジョンの記述が核抑止論の破綻を明示するのでしょうか。私たちは、広島ビジョンは核抑止論を肯定し核兵器廃絶を究極の目標に追いやるものと危惧し、市長にも伝えました。8月6日の平和宣言では、核抑止論を否定する広島市の姿勢が貫かれたと私たちは評価しましたが、今回の答弁はそれと矛盾しませんか。

以上の質問は、私たちが入手した以下の答弁記録に基づいていますので、確認してください。

9月21日、中村孝江議員への答弁

和解の精神とは、あくまで現時点では責任に係る議論は双方で棚上げにし、二度と戦争の惨禍を繰り返すべきではないという考え方を確認し、未来志向に立って対処していこうというものです。従いまして、この姉妹公園協定は、原爆投下に関わる米国の責任に係る議論を現時点では棚上げにしますが、核兵器の使用を二度と繰り返してはならないという市民社会における機運の醸成を図っていくために締結したものです。なお、広島ビジョンの中で安全保障政策に言及し、核の抑止力を肯定する記述はありますが、それは核抑止論が既に破綻していることを明示するものであり和解の精神に何ら関係するものではないと考えております。

9月22日 門田佳子議員の質問への答弁

昨日の本会議で私の答弁の中で「棚上げ」と申しましたのは和解の精神を説明するために用いたもので、さらに姉妹公園協定が、アメリカ国家の責任を不問・免罪にするためのものではないということを理解してもらうために用いたものです。

すなわち、「棚上げ」という言葉は、一般的には問題の解決処理そのものを放棄するというものではなく、あくまで事情に応じて、一時的に保留すると、そういうものだと思います。今回の締結の判断につきましては、米国の原爆投下の責任に係る議論があるということは踏まえつつ、現下の国際情勢、これを考慮するならば、その解決を待つのではなく、核兵器の使用を二度と繰り返してはならないという機運を市民社会に醸成するための未来志向に立った対応を逃がさないようにすることこそが急がれると考え、こんな思いを他の誰にもさせてはならないと世界に訴えてきた被爆者の寛容と和解の精神に沿うものであると考えたからでございます。

国際対話集会2023

日曜日, 7月 30th, 2023

2023年8月6日開催、国際対話集会ちらしです。PDFはこちら

国際対話集会2023

問われるヒロシマ

NO WAR NO NUKES の旗を今こそ高く!

G7広島サミットは、核兵器によって平和が保たれるという「核抑止」の主張を被爆地広島から世界に発信してしまいました。それも、広島選出の岸田首相によって「広島ビジョン」として発表されたのです。サミット前には広島市の児童生徒が学ぶ「ひろしま平和ノート」から「はだしのゲン」や第五福竜丸の記述が削除されました。サミット後には広島市の平和公園と米国ハワイのパールハーバー国立記念公園の姉妹協定が、松井一實市長と米国のエマニュエル駐日大使によって、突然調印されました。「和解」や「未来志向」という言葉が松井市長からしきりに語られています。背景には、米国の要請によって大軍拡を進める岸田政権の強い意思があるように私たちは思います。「戦争できる国づくり」政策が露骨になってきた2023年の8月6日、世界各地で今も続く核被害の実態も学び、私たちは今何をすべきなのか、ともに考え、行動を起こしましょう。

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日 時︓8月 6日(日)14:00~16:30
会 場︓広島弁護士会館 3階大ホール 

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内 容︓

講演1 14:10~
 「世界の核ヒバクシャのネットワークに被爆三世アーティストとして関わる」
川野 ゆきよさん(アメリカ在住アーティスト)

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川野 ゆきよ さん
祖父が爆心地から近距離の中国電力本社(中区小町)で被ばく。数少ない生存者。
現在被ばく三世のアーティストとして米国オレゴン州で活動中。

Oregon PSR(社会的責任を果たす医師団・オレゴン支部)の諮問委員会メンバーとして反核運動に携わる。
バーモント美術大学で修士号取得。作品はアメリカ、日本、オーストラリアで展示されている。全米各地の大学、研究所で講演。

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講演2 14:40~
 「広島・長崎の役割とは︖
      ―広島G7サミットにあたって考えたこと」
     山口 響 さん (長崎の証言の会)

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山口 響 さん
1976年、長崎県生まれ。市民団体「長崎の証言の会」で2014年より証言誌編集長を務める。長崎大学などで非常勤講師。首都圏在住時にはNPO法人「ピースデポ」にも関わった。
共編著に『原爆後の75年――長崎の記憶と記録をたどる』(書肆九十九)など、監訳書
に『核兵器禁止条約の時代――核抑止論をのりこえる』(法律文化社)など。

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報告:

「シンコロブエ鉱山の歴史と現状
  広島・長崎の原点を見つめる」

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形 式︓対面参加・オンライン併用
参加費︓500円

申込み︓対面参加ご希望の方は直接会場にお越しください。(申し込み不要)


オンライン参加ご希望の方は、QRコードまたは
https://forms.gle/rERdiwZrhgDueoucA
の申し込みフォームに必要事項を記入して送信してください。

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主催:核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA) 

代表︓足立修一
事務所:〒730₋0013 

    広島市中区八丁堀5₋22 メゾン京口門404号室 足立・西法律事務所
問い合わせ: 090 9060 1809(藤元) hiroshimahanwa2021@gmail.com

広島市平和行政の変質を問う声明

火曜日, 7月 4th, 2023

広島市平和行政の変質を問う声明


 2023年6月29日、広島市長は在日米国大使館を訪れ、広島平和記念公園(原
爆公園)とパールハーバー国立記念公園(真珠湾記念公園)の姉妹公園協定を締結し
た。原爆公園は、米軍の原爆投下によって無残に無差別大量虐殺された十数万の人々
及び放射能後障害によって遅れた死をもたらされた人々を悼む慰霊の場である。一
方、真珠湾記念公園は、日本軍の奇襲攻撃で始まった日米戦争の戦跡記念公園であ
り、戦果として沖縄からの学童の疎開船・対馬丸を含む日本艦船撃沈を展示する戦勝
記念館である。広島市は、歴史的位置付けが全く異なる両公園の姉妹公園協定の意義
を次のように述べている。


 『本市としても、戦争の始まりと終焉の地に関係する両公園の提携は、過去の悲し
みを耐えて憎しみを乗り越え、未来志向で平和と和解の架け橋の役割を果たしていく
ことになると考えています。』『加えて、「G7首脳広島ビジョン」の実現に向けた第一
歩としてその機運の醸成に資することにつながることから協定締結の申出を受け入れ
ることとしました。』


 これでは、戦争の始まりが真珠湾奇襲攻撃で、原爆投下は戦争の終結を早めたとい
う米国側の主張を認めたことにならないだろうか。私たちには容認できない考え方で
あり、歴史の真実とも違うのではないだろうか。


 明らかに国際人道法に違反する無差別虐殺の原爆投下に対する責任ある歴史的検証
と犠牲者への謝罪があってこそ和解への道は開けるはずだ。


 私たちは無数の原爆犠牲者に対して、人類の未来に対して、あくまで米国の原爆投
下の責任を問い続ける義務がある。また、同時に、日本がかつて植民地支配し、アジ
ア諸国を侵略したことに関し、アジア・太平洋地域の人々に苦難を与え、未だ清算で
きていない問題があることを認識する必要がある。誤った歴史的認識への反省なしに
未来に向かうことは不可能だから。


 ましてやG7 広島ビジョンは核兵器を、核抑止力を有用だと改めて認めたものであ
ると私たちは考えるが、広島市は広島ビジョンが理想的な核兵器廃絶への方途と位置
付けて、両公園の姉妹協定のみならず、NPT 再検討会議においても「機運の醸成に資
する」ものと認識していることは容認できない。これまでの広島の核兵器絶対否定の
土台を崩していいのか。長年かかって核兵器禁止条約を実現した被爆者をはじめとす
る世界市民を裏切っていいのか。


 広島市は、平和教育用「ひろしま平和ノート」にある貴重な教材である「はだしの
ゲン」「第五福竜丸」を4月に削除してしまった。その経緯や理由は不明なところが多
い。なぜ、核開発のための核実験、原爆被害の実態をありのままに伝えることに背を
向けるのか。これも何らかの力に対する追随としか思えない。G7を控えた「環境」
作りだったのか。国内のみならず世界中から不信を向けられてしまっていることを認識すべきだ。
G7広島サミットを控えた2023年3月29日、広島市のホームページから放射能兵器劣化ウラン弾に関する記述が削除された。ウクライナ戦争にあたって、イギリスがウクライナ軍事支援として劣化ウラン弾の大量供与を表明した時期に当たる。


 ホームページのFAQ欄には「劣化ウラン弾が目標物に当たると爆発し、霧のようになった劣化ウランの細かい粒子が空中に飛散します。これを吸い込むと、科学的毒性により腎臓などを損傷するとともに癌などの放射線障害を引き起こします」と簡略に核心を記していた。
劣化ウラン被害記述をウクライナ戦争に使用されるという危機に当たって削除したということは、NATOと一体となってウクライナを支援する日本政府からの指示あるいは広島市側の忖度への疑念が拭えない。


 今春以降次々と広島市の平和行政の変質を問われる施策が松井市政から発せられてきている。G7サミットの広島開催が動機となって広島がヒロシマでなくなってきていることに危機感を覚える。
広島市という自治体は78年前の原爆投下によって無辜の民を瞬時に消され、子どもたちから親を、親から子どもたちを奪われた非人間的悲惨をこうむった地であることを自覚してきたはずだ。広島市には、いずこの国の権力に対しても核の非人道性を訴える義務と権利がある。核大国の、核抑止に頼る国家の権力に媚びず、核絶対否定の信念を矜恃し、市民を、人類の未来を護っていかなくてはならないのではないか。


 被爆78年の8月6日を前にして、広島市の「平和行政」に対して上記について再考を求めるものである。


2023年7月4日


核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)
代表 足 立 修 一

核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)

水曜日, 6月 21st, 2023

 第22回総会と研修会

場所:広島弁護士会館2階 大会議室 (広島城東側、裁判所北側)

時間:6月24日午前10時45分ごろ~12時

総会 2023年6月25日(土)10時~12時

   総会(10時~10時45分)(予定)

   剣友会:HANWA 総会終了後 14時まで

講師:
 高橋 悠太さん
  核廃絶ネゴシエーター/ 核兵器廃絶日本 NGO 連絡会 幹事

テーマ: G7から核兵器禁止条約へ
     「核なき世界を日本から」はじまります

※ 一般参加も歓迎します。オンライン(ZOOM) 視聴申し込みは

    fujigen@abelia.ocn.ne.jp
締め切りは23 日午後 5 時。

問い合わせは 090 9060 1809 (藤元)

G7広島サミットに対する声明

金曜日, 5月 12th, 2023

G7広島サミットに対する声明

 ここヒロシマは、78年前にアメリカ軍が投下した一発の原子爆弾で十数万人の市民が無差別に虐殺された人類史に刻まれた地である。この地には名も知れぬ無数の人々の遺骨が重なる。また原爆の地獄を生き残った人々は78年後の今日も晩発性放射線障害に苦しみ、死が訪れるまで彼らにとっての戦争が終わることはない。だからこそヒロシマに生きる私たちは核兵器廃絶を全力で発信し続けるのである。

 このヒロシマに核保有国とその軍事同盟国のG7首脳が集うのであれば、その目的はただひとつ。核兵器禁止に向けた具体的かつ積極的な検討以外にはありえない。そうでなければヒロシマに集う意味は全くないと私たちは断言する。

 今日、ロシア政府のウクライナ侵略によって核戦争の危機はかつてなく高まっている。

 岸田首相は、2022年8月国連で、「ヒロシマ・アクション・プラン」を公表し、①核兵器不使用の継続の重要性を共有すべきこと、②核戦力の透明性の向上、③核兵器数の減少傾向を維持する、④核兵器の不拡散を確かなものとすること、⑤各国の指導者等による被爆地訪問の促進を通じ、被爆の実相に対する正確な認識を世界に広げることを求めた。

 これについて、原子力の平和的利用の促進を除き、それらの行動は進められるべきだが、これまでの国際的な状況、交渉の進展に照らし、不十分なものというべきである。

 すなわち、1996年の国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見(核兵器の使用は一般的には国際法に違反する)、2000年、2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書で合意された核兵器を全廃させることについての明確な約束、2018年国連規約人権委員会での一般的意見、2021年の核兵器禁止条約の発効などの動きを踏まえるなら、ヒロシマ開かれるG7では、これまでの合意を一歩でも前進させる合意を求めたい。

 特に、2023年4月に発せられたG7外相会合のコミュニケでは、ロシア、中国、北朝鮮の核兵器について、様々な問題を指摘する一方で、自分たちが持っている核兵器については、「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている。」として、正当化を図っている。

 しかし、全ての核兵器が廃絶されるべきとの明確な約束が反故にされるかのような認識がヒロシマで開催された会議で表明されることは許されない。

 「核兵器のない世界」は「理想」ではない。核戦争の危機を回避し、核被害者をこれ以上生み出さないための、その現実的な第一歩こそが核兵器禁止条約である。G7首脳は、このヒロシマで核兵器の禁止にむけた具体的な議論に着手せよ!期限を定めて核兵器禁止条約への参加のプロセスをつくれ!

 G7広島サミットに参加する核保有国首脳は、自らの核開発によって生み出した世界の核被害者に対する責任を果たす義務がある。核保有国の核の傘のもとで、連携して核開発を推進してきた同盟国の首脳も同様である。核の被害者への贖罪と人類の未来のために、ここヒロシマの地で核兵器禁止を誓うべきではないか。

 私達はG7サミットに集う各国首脳に以上のことを強く要求する。

2023年5月13日

核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)

代表 足立 修一

 

The World’s Nuclear Victims Ask: To the G7 Summit Leaders

木曜日, 5月 11th, 2023

世界の核被害者は問う G7首脳へ

月曜日, 5月 1st, 2023


G7関連のお知らせ(続々)

土曜日, 4月 15th, 2023

上の集会はHANWA主催の集会です。オンラインでも参加できます。


G7関連のお知らせ(続き)

土曜日, 4月 8th, 2023

関連のお知らせ


緊急アピール  

月曜日, 3月 27th, 2023

NO WAR!  NO DU!  NO NUKES!

――イギリスによる、ウクライナへの劣化ウラン砲弾の供与、および、ロシアによる劣化ウラン弾の使用を強く非難する――


2023年3月28日

緊急アピール  

NO WAR!  NO DU!  NO NUKES!

――イギリスによる、ウクライナへの劣化ウラン砲弾の供与、

および、ロシアによる劣化ウラン弾の使用を強く非難する――

イギリスがウクライナに供給する「チャレンジャー2」戦車には劣化ウラン弾が伴うことが、3月20日、ゴールディ国防担当閣外相の発言によって明らかになった。

それに対してロシアのプーチン大統領は、イギリスが劣化ウラン弾をウクライナに供与するならば「相応の対応」をすると、核兵器の使用も示唆する発言で応じ、ショイグ国防相も「核の衝突(nuclear collision)」の可能性に言及した。

しかしながら、ロシア自身がウクライナで用いている砲弾のなかに劣化ウラン弾(3BM32 “Vant”)が含まれることが、GICHD(Geneva International Center for Humanitarian= ジュネーブ人道的地雷除去国際センター) による2022年の報告で明らかにされている[1]。こうした事実を考えるならば、ロシアの反応は、自己撞着のきわみであり、その確信的な非人道性を証明するものだと言わざるをえない。

一方、「劣化ウラン弾は数十年にわたって使用されてきている、普通(commonplace)の“通常兵器”(conventional weapon)」であるといった、イギリスやアメリカによる発言[2]も、きわめて大きな欺瞞をはらんでいる。当然のことながら、「数十年にわたって使用されてきている」からと言って、問題がないことには全くならない。

劣化ウラン弾とは何か?

劣化ウラン弾は核兵器ではないが、核兵器の製造や原子力発電に必要なウラン235の濃縮プロセスから生ずる膨大な放射性廃棄物(いわゆる劣化ウラン)を利用したものであり、30ミリ砲弾一発に約300グラムの劣化ウランが含まれていると言われる[3]

劣化ウランは核分裂性ではないが、放射性物質であることに変わりはなく、強い化学的毒性も持つ。したがって劣化ウラン弾は、使用されれば、戦場であるか演習場であるかを問わず、また不発弾の場合でも、人体や環境に広範かつ長期的な影響を及ぼすこととなる[4]

実際、湾岸戦争やイラク戦争で大量の劣化ウラン弾が使用されたイラクでは、小児がんや白血病、先天性異常などの増加の原因の一つとして大きな問題となった[5]。また、これらの戦争に従軍した米英などの兵士たちのあいだで「湾岸戦争症候群」が大きな国際的論争の的となり、旧ユーゴ紛争の後にPKOとして派遣されたヨーロッパ諸国の兵士のあいだでも「バルカン症候群」の原因として問題となった。

イギリスは、今回の供与にあたって、劣化ウラン弾の毒性を否定しているが、実際は、その危険性をはっきりと認識しているのである。事実、イギリス軍は2004年、イラク駐留中の自国兵士に対し、劣化ウランのリスクを知らせる「劣化ウラン情報カード」を発行していることが報道され、問題となった[6]

また、この問題を長年にわたって調査・検討してきているUNEP(国連環境計画)は、すでに広く報道されているように、昨年10月に公表した報告書「ウクライナにおける紛争の環境への影響」において、劣化ウランは「皮膚刺激や腎不全を引き起こし、がんのリスクを高める可能性がある」と指摘している[7]。また、すでにイラク戦争の頃、米軍の放射線生物研究所(AFPRI)による動物実験から引き出されていた、劣化ウランは胎盤を通過してしまうという結論を、改めて国際社会は深刻に受け止めるべきである[8]

劣化ウラン弾禁止に向けた国際社会の取り組み

2007年3月22日、ベルギー議会では、「劣化ウラン弾禁止法案」が全会一致で採択され[9]、2008年5月、欧州議会でも、NATO諸国も含めた欧州各国において、劣化ウラン兵器の禁止に向けた具体的な動きを促す決議が圧倒的多数で可決されている[10]。また国連においても、2007年以降、劣化ウラン弾問題に注意を喚起する決議が繰り返し、圧倒的多数によって採択されてきている。

さらに米国陸軍は2026年11月末までに劣化ウラン弾を装備から除外し破棄する計画であることが、2021年12月に明らかになっている[11]。これは、劣化ウラン弾禁止を求めてきた国際的な世論及び運動を米軍が無視できなくなったことの表れであろう。

国際社会、ウクライナ政府、そして日本政府に求めること

以上のような理由により、私たちは、イギリスによる、ウクライナへの劣化ウラン砲弾の供与に強く反対するとともに、すでにウクライナ侵攻において劣化ウラン弾が使用されてしまっているであろうことを深く憂慮する。

ウクライナ政府及びウクライナの人々は、劣化ウラン弾は自然環境を汚染し、戦後の復興も一層困難にしてしまうものであることを考え、イギリスによるその供与を受け入れないよう心より願うものである。兵士のみならず、一般市民や、後から地雷除去作業などに携わる人々も、劣化ウランによる健康被害に曝されてしまい、地下水の汚染など、長期的な環境被害が引き起こされてしまう危険性があるのである。

国際社会は、1日でも早いウクライナ戦争の終結に向け全力を尽くすべきであり、劣化ウラン弾がさらに使用されることのないよう、また核兵器が決して使われることがないよう、あらゆる方途を探る努力をすべきである。

とりわけ、そうした和平に向けた国際的努力の先頭に立つべき日本政府には、来る5月、広島において開催されるG7会議においては、核兵器の非人道性のみならず、劣化ウランの供与・使用をめぐる問題を提起し、その国際的禁止に向け国際世論を喚起することを強く求めたい。

なお、イラク戦争が開始される直前の2003年3月、広島では、”NO WAR NO DU!(戦争反対 劣化ウラン弾反対!)”の人文字メッセージが、中央公園に集まった約6000人の人々によって作られた。湾岸戦争に続き、再び劣化ウラン弾を用いて戦争が行われることへの強い抗議の表れであり、3月24日、その空撮写真を用いた意見広告がニューヨーク・タイムズに掲載された(添付資料を参照)。また、イラク戦争の前後から、広島や日本からの市民グループは、現地で劣化ウラン弾被害に関する調査を試み、イラクの医師や子どもたちへの支援に取り組んできている[12]

現在、国際的非難の対象は、イラク戦争を仕掛けたアメリカから、ウクライナ侵攻を続けるロシアへと変わっているが、劣化ウラン弾の危険性が隠蔽されてしまっている政治的状況は、残念ながら、いまだに変わっていない。国際社会は、戦場を越えた被害を及ぼす劣化ウラン弾を非人道的兵器として認識し、核兵器ととともに、その廃絶に向けた取り組みを早急に開始すべきである。

HANWA(核兵器廃絶をめざすヒロシマの会)

http://www.e-hanwa.org

問い合わせ先 Email: hanwa[at]e-hanwa.org      Tel: 090-7897-2095             


[1] “ICBUW Statement on British DU Ammunition to Ukraine,”March 22, 2023. (https://www.icbuw.eu/en/).

典拠は、Explosive Ordnance Guide for Ukraine, 2nd edition, 2022, GICHD, p.109 (https://bit.ly/3ZfI0TS).

[2] The Newsweek (March 23)などを参照。

[3] アメリカでは、増え続ける膨大な劣化ウランの処理・利用法の研究が50年代から始められ、考案された一つが軍事利用である。劣化ウラン化合物は、鉄よりも硬く、鉛よりも重いため、砲弾の貫通体部分や戦車の装甲などに使われてきているが、衝突の衝撃によって発火し、微粒子となって環境中に拡散する。「劣化ウラン(DU=depleted uranium」という呼称は、その危険性を覆い隠し、誤った印象を与えてしまうが、通称として本声明においても用いることとする。詳細は、「[劣化]ウラン兵器とは何か?」(『ウラン兵器なき世界をめざして―ICBUWの挑戦』NO DU ヒロシマ・プロジェクト/ICBUW編、合同出版、2008年、6-13頁)を参照されたい。

[4] 湾岸戦争では、100万発以上の劣化ウラン弾が使われたが、これらの砲弾に含まれていた劣化ウランは、米軍による公式発表によれば、およそ320トンにのぼる。膨大な量の放射性廃棄物が環境中に放出された意味する。

[5] 2009年、両戦争で最も激しい戦場の一つとなった南部バスラで、第1回国際がん会議が開かれた。

[6] レイ・ブリストウ「イギリス政府の欺瞞は続く――湾岸戦争、バルカン、そしてイラク戦争」、『ウラン兵器なき世界をめざして』(合同出版、2008)116-119頁。

[7] “Ukraine war: UK defends sending depleted uranium shells after Putin warning,” BBC, March 22, 2023 (https://www.bbc.com/news/world-europe-65032671).

典拠は、The Environmental Impact of the Conflict in Ukraine: A Preliminary Review, UNEP, October 14, 2022 (https://www.unep.org/resources/report/environmental-impact-conflict-ukraine-preliminary-review).

[8] 米軍も生体への影響を認識 劣化ウランで調査報告」(共同通信, 2003年7月8日)

典拠は、ワシントンの「核政策研究所」が2003年7月に発表した報告書「劣化ウラン――危険性評価の科学的根拠」(“Depleted Uranium: Scientific Basis for Assessing Risk,”Nuclear Policy Research Institute, July, 2003 (https://www.helencaldicott.com/depleted.pdf).

[9] この法律は、いわゆる「通常兵器」に含まれてきている劣化ウラン弾、および劣化ウランを用いた装甲の、ベルギー国内における製造、貯蔵、供給、移送、使用を「予防原則に基づき」、国内法として世界で初めて禁止するものとなった。

[10] 「ヒバク反対キャンペーン」のHP(http://www1.odn.ne.jp/hibaku-hantai/uran-heiki-kinsi.htm)などを参照。

[11] ICBUWのホームページを参照。

[12] 詳細は、『ウラン兵器なき世界をめざして』を参照されたい。