ご報告:HANWA NPT派遣団

ニューヨークで核兵器廃絶を訴える

NYタイムズ意見広告、NPTへの反核平和使節団が活用

   
 日本では、ゴールデンウイークで海外出国組が多い時期、「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(Hiroshima Alliance for Nuclear Weapons Abolition:以下、HANWA)は、ニューヨークに渡り、核兵器廃絶をめぐる国際的な攻防の場である5年に1回開催されるNPT核不拡散条約の再検討会議に働きかけるという取り組みを行ないました。被爆者で70歳代半ばの空さんから中学2年生まで、被爆二世2名、大学院生2名など幅広い年齢層のメンバー18人が基本的に自腹で参加しました。

 NPT条約は、発効した1970年に核兵器を保有していた5つの国は、核兵器保有国として容認される一方で、それ以外の国は核兵器を持つことはできないとする極めて差別的な条約です。しかし、その前文と6条には、核兵器国が、自ら保有する核兵器を減らしていかねばならないとする条項も含まれており、条約の限界と矛盾を知ったうえで、この場を国際的な攻防の場にすることが重要です。特に、2000年のNPT再検討会議では、アメリカなど核保有国の保有核兵器の明確な約束が取り付けられ、21世紀の早い段階での核兵器の廃絶が見込まれていました。しかるに、アメリカ政府は、今年の第7回NPT再検討会議において、Sep.11のできごとを機に、世界の情勢は大きく変化し、2000年の約束に拘束されるものではないとの見解で押し通そうとしています。そこで、私たちHANWAは、その攻防の場に加わり、少しでも状況を変えていく側に立とうとしたわけです。

4月29日、朝9時、広島駅での出発式を経て、成田経由でニューヨークに着いたのは、現地時間で29日の19時でした。空港には日本からのマスコミが待ちかまえていました。というのは、被団協の皆さんがこの飛行機に同乗していたためですが、もう一つ、この日のニューヨークタイムズに核兵器の廃絶を求める広島・長崎からの意見広告が掲載されたことがありました。私たちは、早速、空港のロビーで、ニューヨークタイムズを購入し、意見広告の紙面を感慨深く見ることになりましたが、その様子をマスコミが取材してました。

意見広告は、広島・長崎の、そして日本各地の市民の力を少しずつでも出し合って、世界からニューヨークに集まる政府代表、NGO,そして何よりもアメリカ市民に広島からの声を届ける手段にしようというものです。意見広告は、掲載されただけであれば、読まない人も多いだろうし、経費がかさむ割にあまり効果は見込めない。私たちも一般論としては、そう言う側面があることは承知していました。が今回は違うという想いがありました。日本から相当数の参加者がいても、言葉の壁の前で、何もしないで帰ってくる人は、かなりいるのではないか。一人一人が、なにがしかのことをするためにも英文で訴える道具が必要で、その面で意見広告は有効です。これを見せて、広島から来たと言うだけでも、何がしかのインパクトはあるはずです。HANWAも含めて広島から行くメンバー100人が、これを持って配る道具として使えば、大きな反響があるのではないかと考えました。

 当初は、カンパ500万円ほどを集めねばならないのに、NPTのわかりにくさ、一般性のなさを考えると、お金が集まらないのではないかとの消極的な意見もかなりありました。しかし、発想に共鳴してくれる人は必ずいるはずとの信念で、とにかく始めたところ、広島・長崎を初め、全国の皆さんから熱い想いの下でカンパが集まり、何とか実現にこぎつけることができました。

 しかし、4月初めまで、なかなか軌道に乗りませんでした。4月9日、街宣の場で、意見広告の中身をほぼ確定した紙面を公表すると言うことで呼びかけたところ、マスコミが殺到しました。少なくとも広島県内ではかなりの報道がされ、更に17日にはヒロシマ平和テント村を開催し、繁華街の一角で終日、意見広告を訴えました。平和テント村には、ヒロシマ平和文化センターもテントを一梁だし、市民運動のメンバーと一緒に過ごし、平和市長会議が提唱する2020ビジョンを宣伝しました。ここでは、NPT再検討会議でニューヨークに行くメンバーが一堂に会する形で、ステージでのアピールを行いました。マスコミの扱いが大きくなるにつれ、その記事や紙面案を資料に入れて働きかけることで、そこそこの賛同をえられるようになっていったわけです。こうして、とにかく4月末の週に掲載されるところまでこぎつけました。その記事が、幸運にも、丁度、私たちがニューヨークに到着する日に掲載されたというわけです。

 5月1日、NPT会議の開会を目前にしてのアボリッシヨン・ナウなどが主催する国際的なラリーと集会が行われました。世界中のNGOが一同にかいして、広い道路を全部使っての迫力あるデモに、私たちも4枚の横断幕を拡げながら参加しました。広島から来たことがはっきりわかる横断幕で、結構迫力があり、多くのカメラが写していました。主催者発表4万人、私たちの感じでは2万人近くはいたと思います。約2時間にわたる長いデモの後、セントラルパークに到着。ピースマークをヘリで空から写すと言うことで、その枠に沿って並みました。平和市長会議から広島・長崎市長、被爆者として坪井さん、下平さん、各国のNGOなどのアピールや音楽演奏が続きました。この間に、私たちは、広島から来たと言いながら、2000枚の意見広告の実物大チラシ、NODU縮刷版600部を会場で撒きました。とても反響があり、「Great!」と言って掲載新聞の現物をみせてくれた人や、バッチをくれたりで、とても効果的でした。まだ集約できていませんが、この場では18人全員がそれぞれ別の体験をしたと思われます。

3日は、平和市長会議のメイン集会が国連近くのジャパン・ソサイテイであり、メンバーの数人が終日それに参加しました。ここでも、意見広告、基本文書,参加者のアピールなどをセットにしたもの150部を配布しました。平和市長会議に来た世界からの自治体の首長のほぼ全員に意見広告が渡ったことは大きな意義がありました。

 さらに、意見広告のコピーは、他のアピール・資料などと合わせて、核保有国、新アジェンダ連合などを含め、100カ国近くの国の国連代表部に届けられました。

5月4日には、国連内部の会議室にて、ワークショップ「“ヒバク”再考?ヒロシマ・ナガサキからイラクまで」をHANWAとNO DU (劣化ウラン弾禁止)ヒロシマ・プロジェクトの共催で開きましたが、こうしたワークショップなどの場でも、意見広告のコピーなどを配布しましたが、きわめて好評でした。ワークショップのゲスト・スピーカーの一人、ヘレン・カルディコット博士に、「意見広告はご覧になりましたか」と尋ねてみると、「勿論。とても素晴らしい。指摘は全て正しい」との答えが返ってきました。

 さらに、意見広告のコピーは、他のアピール・資料などと合わせて、核保有国、新アジェンダ連合などを含め、100カ国近くの国の国連代表部に届けられました。

またNGOが発行している5月2日発行の「News in Review/第一号」デジタル版のトップ記事として「ヒロシマからのアピール」、「意見広告紙面」、「ワークショップのお知らせ」などが掲載されました。「News in Review」は、プリントアウト版が毎日500部が発行され、NPTに参加している各国代表部などに配られる他、デジタル版が世界各地のメールニュース購読者に配信されています。これも、意見広告が、多くの関係者の意識に触れる機会を創ったと思われます。(なお、「News in Review」は、前回までのNPT再検討会議で発行されたものも含めて全てが、発行団体である ReachingCriticalWill のホームページにアップされています。 
     http://www.reachingcriticalwill.org/legal/npt/nirindex.html

以上、不十分性はあったにしろ、意見広告を一つの道具として、1週間の期間にそれ相当の動きをつくれたと思います。これは、ひとえにカンパにご協力いただいた皆さまのおかげです。ここにご報告させていただくと同時に、心からお礼させていただきます。

ただし、現在のカンパ総額は350万円ほどでして、掲載に必要な経費500万円にはまだ達しておらず、もう一息の努力をしているところです。周囲の方に声をかけていただくなど、無理のない範囲でご協力いただければ幸いです。

2005年5月26日

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核兵器廃絶をめざすヒロシマの会 

Hiroshima Alliance for Nuclear Weapons Abolition (HANWA)

【共同代表】 岡本三夫 河合護郎 森瀧春子

【事務局】  〒730-0012 広島市中区上八丁堀8-23広島県生協連内 

電話082-502-3850 FAX082-502-3860 
Eメール info@e-hanwa.org

ホームページ https://www.e-hanwa.org/

郵便振替 「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」01300-2-50889

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中国新聞 2005年5月6日

NY、核関連集会盛ん
広島などの市民グループ


Photo
劣化ウラン弾をテーマに広島の市民グループが開いたワークショップ

 【ニューヨーク5日宮崎智三】米ニューヨークの国連本部で開催中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に併せ、各国の非政府組織(NGO)が連日、国連ビル内などで核関連の集会を開いている。広島など日本の市民グループも、劣化ウラン弾(DU)やプルトニウム再処理問題などを取り上げ、存在感を示している。

 DU問題を考えるワークショップ(研究集会)を四日に主催したのは広島の団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」と「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」。米国や欧州のNGOメンバーたち約五十人が参加し、米軍がイラクで使ったDUが原因とみられる健康被害を、写真や科学者の証言で指摘した。

 原爆投下直後に大気中のちりを吸い込むなど、これまで被爆地でも軽視されがちだった体内被曝(ひばく)の問題も取り上げ、意見を交わした。

 放射線被害という共通項で原爆とDU問題をつなぐ試み。背景には、核実験や原発事故、DU被害者と、ヒバクシャが拡大する現実がある。同プロジェクトの嘉指信雄代表は「核兵器だけに焦点を限定すれば、現在進行中の放射線被害や汚染を見過ごす」と指摘し、被爆地広島だからこそこの問題を考える役割がある、と訴える。

 米国の「憂慮する科学者同盟」が五日開いたプルトニウム再処理問題の集会には、スピーカーの一人として原子力資料情報室(東京都中野区)の伴英幸共同代表が招かれ、日本が青森県六ケ所村で進める商業用の再処理計画と核拡散の恐れも議題に上った。

 国連ビル内ではほぼ毎日、これらNGO集会が三~五カ所で開かれ、日本のメンバーたちも積極的に出席して意見を表明。政府代表による演説だけが被爆国の主張ではないことをアピールする機会にもなっている。

(2005.5.6)

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中国新聞2005年5月2日

テロ遺族と交流 米で被爆者ら ’05/5/2

 【ニューヨーク1日宮崎智三】国連本部で二日午前(現地時間)に開幕する核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向け、ニューヨークに滞在中の広島の被爆者や市民グループは四月三十日、地元平和団体との交流や街頭署名などの活動を本格化した。

 核兵器廃絶をめざすヒロシマの会などの約四十五人は、米中枢同時テロ犠牲者の遺族でつくる「ピースフル・トゥモロウズ」などと交流会を開いた。テロで夫を亡くしたアンドレア・ルブランさんら米国側の三人が、核兵器や戦争のない世界をめざす思いを語った。

 空フミ子さん(75)=広島市南区=は原爆で左目を失った体験を証言。会合後、「市民が犠牲になるのは原爆もテロも同じ。核兵器にも戦争にもノーという被爆者の思いは伝わったと思う」と話していた。

 広島県原水協の約三十人は雨の中、繁華街のマディソン・スクエア・ガーデン周辺で核兵器廃絶を求める署名活動をした。「握手を求めてくる人がいて反応は予想以上」と松本真事務局長。午後はエジプトの国連大使や米国の平和活動家による集会に出席し、「米国が核軍縮に背を向け、再検討会議の見通しは厳しい」「打開には国際世論の盛り上げが不可欠だ」などの意見に耳を傾けた。

 秋葉忠利広島市長もこの日、ニューヨーク入りした。非政府組織(NGO)などの核軍縮ネットワーク「中堅国家構想」の会合で発言し、自らが会長を務める平和市長会議が提唱している、二〇二〇年までの核兵器廃絶を目指す緊急行動(2020ビジョン)への支持を呼びかけた。

【写真説明】テロ遺族のルブランさん(左側中央)たちに被爆体験を証言する空さん(右)


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毎日新聞2005年5月1日

世界を変えたい:
NPT・核軍縮の現場で 思い届け「今こそ廃絶を」 /広島

 次代にも残る怖さ訴え

 「核兵器のない世界に変えたい」と、今、各国の人々が続々と米ニューヨークへ集まっている。2日から始まるNPT(核拡散防止条約)再検討会議に向けてデモ行進などをし、核廃絶や核軍縮の流れを導こうとの考えからだ。日本からも、広島・長崎の被爆者約40人を含む1000人以上が渡米した。広島・長崎に残った人たちの熱いまなざしとともに紹介する。

 「無差別兵器による苦しみを直視せよ」。29日付の米紙ニューヨークタイムズに、大きな見出しが踊った。同日夕、ニューヨーク(NY)のJ・F・ケネディ空港に、この意見広告を出した「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」のメンバーらが到着。森滝春子共同代表らは、まず空港ロビーで同紙を買い求め、食い入るように見つめて、紙面の出来を確かめた。

 同会メンバーの湯浅一郎さんは「会議の開幕を控えたいいタイミングに掲載できた。このコピーを各国の政府代表団に配って、核兵器廃絶を訴えたい」と話した。
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毎日新聞4月30日

核兵器のない世界を:
NPT再検討会議に向けて 平和使節団の10人が渡米 /広島

 広島から核廃絶を訴える--森滝さんら渡米

 米国・ニューヨークの国連本部で来月2日に始まるNPT(核拡散防止条約)再検討会議に参加する「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の森滝春子・共同代表ら平和使節団の10人が29日、JR広島駅を出発、成田空港を経由して渡米した。メンバーらは同駅前での出発式で、会議に向けて作った横断幕「Hiroshima Appeal NO NUKES(広島から核廃絶を訴える)」を掲げて会議の成功を祈った。

 式で、森滝さんは「私たちは60年間核廃絶を訴えたが、今は核兵器が実際に使われかねない危険な状況。広島の他の市民団体などから同会議に訪れる約100人と連帯して核廃絶に力を発揮したい」と話した。

 核廃絶を訴えようと、HANWAが米紙・ニューヨークタイムズに掲載を企画した意見広告は、29日付(現地)で掲載されることが決まり、森滝さんは「意見広告をコピーして世界各国の代表団などに配り、広島が何を訴えようとしているのかを伝えたい」と語った。【吉川雄策】

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毎日新聞2005年4月22日

核兵器のない世界を:
NPT再検討会議に向けて 29日に使節団、渡米 /広島

 「被爆70年はない」の決意で--ヒロシマの会

 広島市の反核市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(森滝春子さんら共同代表)はこのほど、西区の同区民文化センターで、来月のNPT(核拡散防止条約)再検討会議に派遣する平和使節団18人の壮行会を行った。29日に会議の開催地、米・ニューヨークに出発し、米国同時多発テロの遺族との交流や被ばくの研究集会を行う。

 渡米するのは、ともに同会共同代表の森滝さんと岡本三夫・広島修道大名誉教授ら。被爆者の空ふみ子さん(75)や大学院生、中学生も行く。

 同会は、再検討会議の開催前に、米紙へ意見広告を掲載する予定。そのコピーを市民や政府代表団に手渡し、核兵器廃絶を呼びかける。再検討会議の会場となる国連本部では「被ばく再考-ヒロシマ・ナガサキからイラクまで」と題した研究集会を開き、劣化ウラン弾などによる体内被ばくの問題を議論する。

 壮行会で、岡本共同代表は「『被爆60年はあっても被爆70年はない』という被爆者の悲痛な叫びに応える役割を果たしたい」と決意を語った。【遠藤孝康】
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